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二月大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座さよなら公演 二月大歌舞伎(夜の部)
歌舞伎座 2009年2月7日(土)16時30分開演 1階17列38番

演目や役者の顔ぶればかりでなく、さよなら公演も2ヶ月目で浸透してきたたこともあるのかもしれないが、チケットはよく売れているらしい。この日も1階で若干補助席が出ていた。

1.蘭平物狂 二幕
三津五郎の蘭平を観るのは平成16年8月以来二度目。

行平館では物狂いの踊り、そして奥庭では立ち回りが見ものであるわけだが、いずれも充実した動き。立ち回りは最初の内はともすれば捕り手とゆっくり動きを合わせているようでいて、後半にかけて徐々にスピード感が出てくるのが凄いところ。


2.歌舞伎十八番の内 勧進帳 長唄囃子連中
1月よりは充実した演目の今月でも、特にお目当てだったのがこれ。

期待に違わず、花道の出から吉右衛門の弁慶の存在感が何より強く印象に残る。全体を通じて、科白劇として中身の濃い勧進帳となっており、観ることができて良かったと素直に思える舞台だった。四天王も段四郎、染五郎、菊五郎、松緑と揃っていて嬉しい。


  河竹黙阿弥 作
3.三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場 一幕
玉三郎のお嬢、染五郎のお坊、松緑の和尚という顔ぶれ。

玉三郎の口跡は正直やや違和感もあるが、思ったほどではなく個人的には何とか許容範囲というところか。少し七之助のような雰囲気も感じた。お坊は意外と難しい役どころで染五郎も奮闘していたが、手の内にするにはもう一歩というところかもしれない。松緑も口跡を含め好き嫌いは別れるかもしれないが、辰之助時代から何度も手掛けてきた成果というか、自分のものにしている雰囲気は感じられてまずまず。
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壽初春大歌舞伎(昼の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座さよなら公演 壽初春大歌舞伎(昼の部)
歌舞伎座 2009年1月25日(日)11時開演 1階17列17番

この日は、アメリカ在住10年以上になる学生時代以来の友人と同行。日米の生活を通じ政治・経済・文化と幅広い分野に造詣が深いのだが、歌舞伎はあまり観ていないものの興味はあるとのことで、仕事で一時帰国している時期に合わせて誘ってみたという次第。

1.春祝式三番叟 竹本連中
演舞場と並んで三番叟物から始まるが、こちらはもう少し儀式性が強い感じ。同行の友人に演目の由来などつらつら説明したが「まあ、縁起物ということね」と簡潔的確にまとめられてしまった。

幕が上がると松羽目の舞台で、まずは先触れの後見として錦之助と松江が登場し客席に一礼。続いて翁が千歳と三番叟を伴って現れる。翁は傘寿の富十郎で、膝の不安を微かに感じないでもないが、何といっても堂々とした姿に落ち着きがあるし「とうとうたらり・・・」の声にも張りがある。千歳は菊之助と松緑で、特に目立つところはないものの神妙に勤めているという様子。翁が退出すると背景が松から鶴へと変わり、梅玉が勤める三番叟が動き始める。こちらも特に派手な動きも見せず行儀良くきちんきちんと舞い進んでいくが、むしろそれが観ていて心地良いという印象。



  近松門左衛門 作
2.平家女護島 俊寛 一幕
幸四郎の俊寛はこれまでも観ているが、残念ながらしっくりきた憶えがない。実も蓋もないがむしろ他の役者達がどうかに関心があったというのが正直なところ。

今回も、冒頭から成経と千鳥の婚礼で一指し舞う辺りまではまあそれほどでもないが、船が到着して以降は、悲しみ、驚き、落胆、葛藤といった激しい感情の起伏を現すべき場面場面で、あえて喉を絞ってに弱々しさを強調したような口跡への違和感もあり、なかなか素直に感情移入しにくい。瀬尾そして清盛への憎しみ、妻東屋への追慕、千鳥への慈愛、そして「思い切っても凡夫心」以降の幕切れと、いくつもあるポイントのどこを軸として組み立てているのかも伝わって来にくい。初見だった同行の友人も「何か、考え過ぎという感じかな」という印象を口にしていた。

瀬尾はこのところ段四郎の安定した芝居を多く見てきたが、今回は彦三郎。多少癖のある口跡もまあ許容範囲で、憎らしさはもう一段強い方が良いとは思うが、極めどころの芝居は結構骨太な安定感があった。康頼は初役という歌六は強い存在感を示すまでには至らないものの、不足はない。

成経は三度目となる染五郎で、せりふも動きもかなりしっくりと身についた感じで、なかなか良い感じ。丹左衛門も数多く勤めている梅玉で、一層の安定感と颯爽とした佇まいを見せて十分。同じく何度も勤めている芝雀の千鳥も、一旦取り残されてのクドキに情のこもった味わいが感じられたのが嬉しい。



  河竹黙阿弥 作
3. 十六夜清心 一幕
物語としては発端となる箇所だけの上演でもあり、また清元に乗せて心中の場面を描く場面に漂う独特の風情と役者自体の魅力を味わう演目だけに、初見の友人にはどうかと思ったが、それなりに楽しんでもらえたようで一安心。

何度も手掛けている菊五郎の清心、また二度目というのがちょっと意外な時蔵の十六夜ともに、役の若さを見せることも含め手に入った安定感がある。場が変わって俳諧師白蓮は吉右衛門で、こちらは懐の深い役どころに良く合った口跡で味わいを見せる。付き合う船頭の歌昇は初役だが、吉右衛門との間合いにも無理がなく、良い意味で器用にこなす。求女の梅枝も、こうした水準の役者達の中で臆せずきちんとした芝居で十分。



4.鷺娘 長唄囃子連中
今回友人を誘う際に、夜の部は残念ながらスケジュールが合わなかったのだが、昼の部でもこれを観てもらえばとりあえずは損はないだろう、と思っていた。私自身、最近記憶しているだけで2005年の歌舞伎座本興行、2007年の特別舞踊公演についで3回目になるが、今回も極めてレベルの高い舞台となっていたと思うし、客席にジワが来るという感覚を友人にも味わってもらえたのは良かった。また、杵屋勝国以下の三味線と囃子方がこちらも高い水準の演奏を聞かせてくれて、このことにも友人ともども強い印象を受けた。

今回一つ感心したのは、早変わりで引き抜く直前の乱れが殆ど見られないこと。最初の白から赤へ変わる時は、身体の前で両袖をきっちりと重ねることで変わる真際まで白い姿を保ち、その後も傘の陰に上手く隠れることで、引き抜いて出た後との変化を鮮やかなものにしているのは、やはり玉三郎ならではの美学の一端ということだろうか。



終演後、友人からは「こんなに水準の高いものをいつも観られるというのは、本当に贅沢なこと。(魅力的な)『悪所』だよなあ。」とのコメントで、楽しんでもらえただけでなく、まあすっかりお見通しという感じだった。


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壽初春大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座さよなら公演 壽初春大歌舞伎
歌舞伎座 2009年1月24日(土)16時30分開演 1階2列33番

1月も下旬になって、ようやく「さよなら公演」の始まった歌舞伎座へ。

1.壽曽我体面 一幕
1月の演目と出演俳優を見たとき工藤はてっきり富十郎かと思ったが、よく見たら幸四郎だった。幕開き直後の道具裏からの声は朗々としていたが、登場してからはくぐもった口跡がやはり気になる。もちろん、五郎・十郎に位負けはしないものの、もっと堂々と大きく見せることは十分できるはずだと思うのだが、意外と(でもないか)終始淡々とした雰囲気。

見どころは、何と言っても吉右衛門の五郎。本人も筋書のインタビューで「64才である私が、前髪の、エネルギーの有り余った若者として演じたい」と言っているが、由良之助(内蔵助も)、弁慶、河内山を持ち役にしているイメージも邪魔をしてか、直情的な若武者には見えにくい。それでも、一生懸命に勢いと稚気を見せる姿が微笑ましくもあるし、存在感の大きさは十分すぎるほど。この先再度演じる可能性は少ないのではないかと思うと、貴重なものを見せて貰えたという気持ちになった。

菊五郎の十郎は、何回となく勤めてきた本役であり文句なし。女形では、大磯の虎の芝雀の美しさが目立つ。菊之助の化粧坂少将はちょっと控えめ。染五郎が赤っ面の近江小藤太、松緑が白塗りの八幡三郎なのは、ニンからすると逆の方が合っているかも。鬼王新左衛門は梅玉で、きっちりとした行儀良さが心地良い。



2.春興鏡獅子 長唄囃子連中
まずは幕開きで吉之丞の老女、歌江の局が並んでいるところに贅沢さを感じる。

勘三郎の本作は、上演記録によると勘九郎時代に本興行で15回、襲名後は今回が2回目とのこと。こちらもここ10年程の間に何度も観ているが、今回はあまり勢いに流れる面が見られない。まずは弥生だが、一つひとつの所作をとても丁寧に進めていく姿が印象的。

胡蝶はともに8才の千之助と玉太郎で、一生懸命に踊る姿がきちんとお稽古をしたことも感じさせて何とも可愛いらしく、殆どの観客が目尻を下げていたのではないか。

後ジテの獅子になってからも、一つ一つをかっちり極めながら、髪の振り方も勢いに任せるというよりは着実に盛り上げていく感じで素直に観ることができた。全体を通じて、キレや勢いは以前ほど目立たないものの、バランスの良い仕上がりとなっていたように思う。



  三島由紀夫 作 二世藤間勘祖 演出・振付
3.鰯賣戀曳網 一幕二場
勘三郎・玉三郎コンビで観るのもこれで三度目。猿源氏の父・海老名なあみだぶつは、前回まで勤めていた左團次が今月は演舞場なので今回は彌十郎だが、こちらも博労や廓の亭主で出演経験があるだけに、幕開きから違和感がない。博労はこちらも三回目となる染五郎で、野暮ったい雰囲気を無理なく出して笑いをとっていた。

主役の勘三郎と玉三郎も、ともに今まで以上に無理のない感じ。鰯売りの声も魚尽くしの軍物語も勘三郎が時々見せるやり過ぎ感もなく、素朴なお伽話という枠の中ですいすいと話が進んでいくのは悪くないし、玉三郎も、鰯売りの声を聞いて城から抜け出したお姫様が廓に売られ傾城蛍火となっている、というおっとりと浮世離れした設定のとおりの風情で、幕切れまで微笑ましい気持ちで楽しめた。

他には、東蔵が揚屋の亭主を初役ながら予想通り器用にこなす。庭男実は藪熊次郎太の亀蔵はまずまず。また、蛍火を取り囲む他の傾城達が歌女之丞、京妙、京蔵といった顔ぶれで、対照的に濃い雰囲気を漂わせていたのも楽しかった。
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初春花形歌舞伎(昼の部) [観劇(伝統芸能)]

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初春花形歌舞伎(昼の部)
新橋演舞場 2009年1月18日(日)11時開演 3階1列42番

昨日に引き続き演舞場へ。今日は1列目の上手側で通路際の席なので、少しゆったり。

1.猿翁十種の内 二人三番叟 竹本連中
猿楽に起源を持ち能から歌舞伎へ取り入れられた三番叟物は本当に様々なスタイルがあるが、今回の「二人三番叟」は澤瀉屋の家の芸として初代猿翁から当代猿之助へと受け継がれてきたもの。澤瀉屋若手だけで演舞場以上の本舞台にかけるのはチャレンジと言えるだろう。

下手に橋掛かり風の部分を持つ松羽目の舞台。文楽で幕開き前にいつも聞きなれていることもあって、上手に並ぶ竹本の響きが心地良い。まずは笑也の千歳、弘太郎の付千歳、さらに段治郎の翁が登場するが、残念ながら古風な大らかさや荘重さが今一つ感じられないのが、少々物足りない。続いていよいよ右近と猿弥の三番叟が登場し、こちらは人形ぶりも交えて軽妙に踊り、片方がサボったり帰ろうとするところでは客席からも和やかな笑い声が聞こえていた。



2.寿初春 口 上 一幕
   市川海老蔵「にらみ」相勤め申し候
今公演の演目が発表されたとき、私も「にらんでもらいにだけ行くかなぁ」と軽口を叩いたのだが、昼夜全ての中で市川宗家御曹子の海老蔵ならではの幕と言えばやはりこれだろう。得意の目力でにらむところでは襲名時の口上を思い起こしたし、狂言名題(演目)の読み上げをするだけで「仕初め式」という古風な雰囲気が少し味わえるのも悪くはない。



3.義経千本桜 木の実/小金吾討死/すし屋 二幕三場
千本桜の三役である渡海屋銀平実は平知盛、いがみの権太、佐藤忠信実は源九郎狐を全て演じることは、「立役の卒業論文」という言い方がある。出典不詳なのが気になってネットで簡単に検索してみた限りでは、どうも当代猿之助が元気な頃に「一日で三役演じれば・・・」という前提で言ったということのようだ。海老蔵の場合は飛び飛びながら1年間の短期間に全て手がけているものの、まだまだ卒業とは言えないと思うのは私ばかりではないだろう。「傷は多いが意欲的」と言うべきか、「意欲はあるとは思うが、相変わらず傷も多い」と言うべきか、難しいところではある。

海老蔵の他の役、あるいは獅童の忠兵衛で感じたのも似た感覚のような気がするのだが、妙に生々しいというか、型を追うよりも自らの実感を頼りにリアルさを前面に出した芝居のように見えて仕方がない。「木の実」では、そのやり方がそれなりに効果を上げている面があるようにも思えたが、かといって言葉や醸し出す雰囲気は大和の田舎のならず者ではなく基本的には江戸のものなので、やはり中途半端さは否めない。

さらにこれが「すし屋」になると、海老蔵流リアルでは押しきれないと言うか、きちんとした型を踏みながら情も交えて盛り上げていくやり方をしてほしいという物足りなさがどうしても残ってしまう。また、全くレベルの違う話かもしれないが、先に観た友人が指摘していて私も気になってしまったのが、海老蔵の肉体、というか筋肉。胸元をはだける場面も多いわけだが、ジムで鍛えたような大胸筋は、これも江戸時代の田舎のならず者の身体に見えず、リアルさを追うやり方自体も阻害しているような気がしてしまった。

その他の顔ぶれでは、段治郎の小金吾が若衆らしい風情で立ち回りもまずまず。笑三郎のこせんは世話女房らしさを見せる。若葉の内侍は元々存在感を見せるのが難しい役だと思うが、笑也でもやはり影の薄さが気になった。門之助の弥助実は経盛は過不足なし。春猿のお里はまずまずではあったが、時に見せる生々しさがやはりマイナス。左團次の弥左衛門、右之助のおくらは、さすがに本役で観ていても落ち着く芝居。

4.お祭り 清元連中
同じ演目でも、先日の松竹座では仁左衛門の鳶頭に孝太郎の芸者に若い者が立ち回り風に次々と絡む、という形だったが、今回は海老蔵、獅童、猿弥の鳶頭に春猿、門之助、笑三郎の芸者が順次舞台に現れて二人ずつ、あるいは鳶頭だけ、芸者だけでの踊りを見せ、最後は海老蔵を中央に全員が並んで幕となるというやり方。まあ、前幕の権太の落ち入りで打ち出しというのも暗いので、昼の部を明るく締めくくるという意味はあるということだろう。

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初春花形歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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初春花形歌舞伎(夜の部)
新橋演舞場 2009年1月17日(土)16時30分開演 3階2列14番

1.歌舞伎十八番の内 七つ面 常盤津連中
歌舞伎十八番の中で、九代目が「新七つ面」という形で復活し新歌舞伎十八番に加えたり、二代目松緑が昭和58年に別の形で上演してはいるが、それ以外には殆ど演じられていないとのこと。その意味で、今回の上演は復活と言うよりむしろ新作に近いと言えるだろうし、作曲、振付を含めて苦労もあったのではないか。それでも幾つかの手がかりをもとに、七つの面を取替ながら踊る所作事としてシンプルにまとめられており、面白く見ることができた。



2.恋飛脚大和往来 封印切 一幕
澤瀉屋若手の封印切は、本格的に歌舞伎を見始めて間もない平成4年にパルコ劇場での右近/笑也で観た憶えがあるが、今回は澤瀉屋で固めた中に獅童の忠兵衛を迎える形。ただ、失礼ながら今月最も「怖いもの見たさ」だったのが正直なところだが、見終わってみると再々失礼ながら思っていたほどの違和感は感じずに済んだ。

養子の立場ながら遊女に入れあげ、一方朋輩である八右衛門の嫉妬と優越感の入り混じった言葉に煽られた挙句に、見栄と短慮から公金に手をつけるという取り返しのつかない行為に及ぶ、そんな若者の姿を、型とか上方言葉のこなしは別にして、何とも言えずリアルな雰囲気で見せていたように思う。今後とも煮詰めていって再演の機会を得ることができるなら、むしろ意外と向いている役かもしれない、という気もした。

対する八右衛門は、猿弥が本興行では恐らくは初役で勤めていて、芝居の流れを断ち切らないように頑張っているのだが、そうするとどうしても言葉が平板になり、良く言っても現代の関西弁になってしまうのが何とも辛いところ。

笑三郎の梅川は、しっとりと破綻なく安心感はあるが、贅沢を言えばもう少し若い一途さが強めに出ても良い気もする。門之助のおえんは4年前の浅草以来だが、まずまず手堅く勤める。槌屋治右衛門の寿猿も、もう一段の大きい存在感や男気が見えると良かったか。



3.弁天娘女男白浪 白浪五人男 二幕五場
海老蔵の弁天小僧は新之助時代の平成10年3月以来とのことだが、私としては初見。娘姿でも結構ごつい感じだし女形の声もぎこちないのが難と言えば難だが、菊五郎~菊之助ラインの雰囲気が唯一無二というわけでもない、と一歩引いて考えれば、男に戻ってからのふてぶてしさを見せるこうしたやり方も「あり」なのかもしれないとも思うし、少なくとも例えば彼の与三郎よりは違和感は少ない。

獅童の南郷も浅草で2回経験していることもあり、本役とまでは言えずともぎこちなさはそれほど感じられず、一安心。しかし、左團次の玉島逸当実は日本駄右衛門が登場すると、さすがに格の違いがはっきりするのは言うまでもない。

続く稲瀬川勢揃いでは、段治郎の忠信利平、春猿の赤星十三郎が加わるが、両名ともまずまず。ここまでで終わってもよいのだろうが、大詰では極楽寺屋根立腹の場で海老蔵の立ち回りをたっぷり見せ、最後は山門と土橋で締め括るのは、ご贔屓へのサービスといったところか。


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初春文楽公演(昼夜) [観劇(伝統芸能)]

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初春文楽公演
国立文楽劇場 2009年1月11日(日)

遠征二日目は文楽。国立文楽劇場は、大きな門松、にらみ鯛など、まだまだ正月気分があって嬉しい。


【昼の部】 11時開演 1階4列5番

1.花競四季寿 万才・海女・関寺小町・鷺娘
人形浄瑠璃が初演の変化舞踊。藤間流による「鷺娘」以外は、歌舞伎の片岡愛之助が四代目家元を最近になって継承した楳茂都流という上方舞の振付とのこと。前日の松竹座で藤十郎が踊った「春寿松萬歳」もこの「万才」が元になっているらしい。それぞれに異なる題材で四季の移り変わりを表現しており、新春公演の幕開きとして相応しく楽しめる一幕。

床には大夫7名、三味線6名が並ぶが、清治以下の三味線が良く揃った切れの良い音を聞かせてくれていた。人形では海女と関寺小町を勤めた文雀の味わい深さと、清十郎の鷺娘の華やかさが印象的。



2.増補忠臣蔵 本蔵下屋敷の段
明治期に作られた忠臣蔵の外伝物の一つで、歌舞伎でも観た憶えはない。「假名手本忠臣蔵」九段目の「山科閑居」に先立つ場面を描いており、外伝物ならではのエピソードとして分かり易さがある一方でネタ割れ感も。大夫、三味線、人形ともきちんと勤めて物語の組み立てがくっきりと伝わる。



3,夕霧・伊左衛門・曲輪文章
こちらも松竹座の歌舞伎と同じ演目で、同じ大阪の興行で競い合っているようで楽しい。幕開きからの餅つきなど師走の廓の情景を描く部分も、歌舞伎とは微妙に異なっているのも興味深い。人形は和生の夕霧、勘十郎の伊左衛門で良い雰囲気。義太夫は切の嶋大夫が柔らかくかつきめ細かく聴かせてくれた。




【夜の部】 16時開演 1階7列32番

新版歌祭文
 座摩社の段
 野崎村の段
 油屋の段
「新版歌祭文」の言わば半通し。「野崎村」は歌舞伎、文楽とも最も有名な演目の一つとも言えるし、先立つ「座摩社」もしばしば観ることができるが、「油屋」は恐らく初めてで貴重な機会。

「座摩社」は大坂の当時の風俗が上手に描かれていて楽しい。いつも思うが、金をだまし取る一連の策略やお染久松の絡みなど、役者が芝居でやるよりも人形の方が段取り良く分かり易い印象を受ける。床は複数の大夫が役を語り分けるやり方で、入れ替わりのもたつきはないものの、調子が今一つのように感じられる大夫がいたのは少し残念。三味線は清友が淡々と支える。

「野崎村」は、人形が簑助のおみつ、和生の久作、勘十郎の小助、清十郎のお染、玉女の久松という、当代ではなかなか良く揃った顔ぶれで十分。一方大夫も、前の英大夫から綱大夫、切が住大夫という豪華リレー。闊達な英大夫に続く綱大夫は少し渋すぎるようでもあったが、住大夫はさすがに終始たっぷりと情感溢れる語りで、十分に堪能させていただいた。

「油屋」は、敵役の底が割れた策略とそれが露見するチャリ場、また悪役の戻りなど展開が変化に富んでおり、予想以上に楽しめた。そんな様々な展開を奥の咲大夫が熱く語りきり、燕三がそれを職人的な雰囲気の三味線で支えていた。


タグ:文楽
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壽初春大歌舞伎(大阪松竹座・昼夜) [観劇(伝統芸能)]

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壽初春大歌舞伎
大阪松竹座 2008年1月10日(土)

この三連休は昨年と同じく大阪遠征。まず一日目は昼夜とも歌舞伎。ちょうど十日えびすの宝恵駕籠行列に遭遇。戎橋のたもとでは文楽人形が登場し、松竹座前では福娘が見守る中で坂田藤十郎のご挨拶があるなど、賑やかさを味わいながら劇場内へ。


【昼の部】 3階1列13番

1.義経千本桜 鳥居前 一幕
舞台上手の鳥居は、今回はいつもと違って何本も連なる「千本鳥居」なのが珍しく、目をひく。番付の翫雀のコメントによれば「関西の方々が見て伏見稲荷と分かる道具にした」とのこと。

初役の翫雀は、荒事らしい動きは一通りこなしており大きく破綻があるわけではないのだが、こちらの先入観もあってか、どこかもっさりしているように見えてしまうのが惜しい。愛之助の義経は初役ながら無理がなく、柔らか味もありつつすっきりした様子。孝太郎の静御前も、14年ぶり2回目とは思えないような過不足のなさ。松之助の逸見藤太のせりふが、これまで聴いていたものと微妙に違う気がしたが、正確にはわからなかった。



2.良弁杉由来 二月堂 一幕
我當は昭和46年2月の襲名披露以来とのこと。眉根を寄せる表情が多いのが悟りを開いた高僧には少しそぐわない気もするが、渚の方を母と知ってからの芝居には素直な情が感じられまずまず。秀太郎の渚の方は初役とのことだが、老け具合と、大家の奥方だったという気品と優しさが良いバランスでなかなかの好演。



3.玩辞楼十二曲の内 廓文章 吉田屋 竹本連中 常磐津連中
扇雀が伊左衛門に2回目の挑戦。前回は孝太郎だった夕霧が今回は御大・藤十郎ということで、良く言えば芸の継承の場に立ち会うということだが、悪く言えばお勉強に付き合わされているということになる。

で、実際に見た感想としては、失礼ながら型を追うのに精一杯という印象がどうしても拭い難い。藤十郎の夕霧が登場してから、ようやく舞台の雰囲気に広がりが出て芝居が持つようになる。観客としても消化不良の部分が残るのは当然だが、一番苦しい思いをしているのは扇雀本人ではないかという気がしてならなかった。



4.お祭り 清元連中
仁左衛門も何度も手掛けている舞踊で、すっきりとした舞台は昼の打ち出しに相応しい。孝太郎の芸者も、以前より笑顔に柔らかみが感じられて良い。立ち回りを得意としていた仁三郎が、名題披露後ながら若い者の筆頭で登場しトンボを切ってくれたのは嬉しかった。




【昼の部】 3階1列16番

 四世鶴屋南北 作 奈河彰輔 監修
通し狂言 霊験亀山鉾 亀山の仇討 五幕十場
 序 幕 甲州石和宿棒鼻の場より
 三幕目 駿州中島村焼場の場まで
 中 幕 春寿松萬歳  竹本連中
 四幕目 播州明石機屋の場より
 大 詰 勢州亀山祭敵討の場まで
平成14年国立劇場で仁左衛門が手掛けた復活狂言で、当時観た時にもなかなか楽しく、復活物としては興行に耐えるものだなあと思ったことをぼんやりと記憶している。今回は6年半振りの再演で、前回をきっちり憶えているわけではないのだが、骨格はほぼそのままに場面や展開もある程度刈り込まれて、一層すっきりしたように思う。また、国立の復活狂言を関西で上演することの意味は小さくないように思えるし、終演後に近くの席にいた観客から「すごく面白かった!」という声が聞こえて少し嬉しくなった。

仁左衛門は、藤田水右衛門と隠亡の八郎兵衛という悪役二役をクールに勤め上げる。前半の最後では二役早替わりに本水の立ち回りまで、むしろこの寒い時期に身体の心配をしたくなるくらいだが、余裕をみせつつ大活躍。その他の役者もみなきちんと役にはまっており、たっぷり楽しめた。

中幕は、所作台を敷き松竹梅の背景の舞台となって、藤十郎が赤い着物に紫の素襖を着けた萬歳の姿で踊る。引き抜きなどもあり、全体に正月らしいおっとり華やかな雰囲気。15分程度だったが前後の芝居が殺し場も多く暗めな流れだけに、良いブレイクという気もした。
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新春浅草歌舞伎(第1部・第2部) [観劇(伝統芸能)]

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新春浅草歌舞伎
浅草公会堂 2009年1月4日(日)

【第1部】 11時開演 1階う列26番

お年玉<年始ご挨拶>は勘太郎。内容は特に外連味なく、第2部や2月松竹座の紹介なども素直な感じで微笑ましい。

1.一條大蔵譚 二幕
  曲舞
  奥殿
猿之助の大蔵卿はあまりきちんとした記憶がないので、観ていないかもしれない。今回の「曲舞」も澤瀉屋では演じられていたものの上演は珍しいものらしく、実際今日来るまでいつもの「檜垣」だとばかり思っていたくらいで、当然ながら初見。

ただ実際に観てみると、大蔵卿の命を狙う播磨大掾広盛と八剣勘解由を狂言舞で巧みにあしらうという一幕で、なかなか面白く観ることができた。亀治郎の大蔵卿はどちらかと言えば阿呆を作っている底が見えてしまい易い(賢さが見えてしまう)ので、踊りの上手さも相俟ってなるほど「檜垣」よりこちらの方が向いていると思えた。「奥殿」でも、正気に戻って少し手強さを見せ、また阿呆に戻るところも割合くっきりとしている。

勘太郎の吉岡鬼次郞は、時として力み過ぎと思える箇所もあるものの、総じて忠臣らしさをきっちりと見せる。七之助は常磐御前で、もう少し物語での情を表に出しても良いかとは思ったが、鬼次郞に本心を明かす箇所などは凛々しさも見せなかなか。男女蔵の広盛は相変わらずややせりふの密度が薄い感はあるものの、時代な雰囲気を出してまずまず。亀鶴の勘解由はほぼ本役に近い感じで口跡も良く、亀蔵のような古風さを感じさせる。また、予想以上に良かったのは今回初参加の松也で、鬼次郎女房お京を二幕通じてとても行儀良く勤めていて、とても好感が持てた。



  河竹黙阿弥 作
2.新古演劇十種の内 土蜘 長唄囃子連中
五代目菊五郎が初演し六代目も得意とした演目だが、二代目松緑から当代菊五郎へ受け継がれた音羽屋の家の芸という色が濃いこともあってか、勘三郎は先代、当代とも演じていないため、勘太郎にとっては大きなチャンスでありチャレンジということになる。

舞台は、まず幕開きから亀鶴の平井保昌がしっかりした雰囲気。松也の源頼光も品の良さを見せ、概ね危なげも少ない。次いで七之助の胡蝶が壺折の装束で現れ、こちらも端正に舞って繋げていく。いよいよ勘太郎の僧智籌が登場するが、ここでは期待したほどの大きさは見られない。しかし、後ジテで蜘蛛の精になってからは、特に動きの激しい箇所でのキレと迫力は予想通りなかなかのもの。これで「静」の部分での存在感が大きくなれば更に好ましいとは思うが、初演としては十分な出来だったのではないか。

それにしても、歌舞伎座以外の劇場(南座など)で義太夫狂言などを見て舞台が少し小さい方が空間の濃密さが好ましいと思ったことは何回かあるのだが、この「土蜘」は舞台のサイズとして歌舞伎座の規模がむしろ相応しいのではということを、珍しくも今回ふっと感じてしまった。



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【第2部】 11時開演 1階う列21番

お年玉<年始ご挨拶>は亀鶴。舞台から客席に降りるのにトンボを切ってみたり(ちょっとよろけた)、携帯電話で知り合い(の女性)と話す風で第1部や松竹座の宣伝をしたりと、結構工夫していた。

  長谷川伸 作
1.一本刀土俵入 二幕五場
勘太郎は真っ直ぐな芝居で序幕は良いだろうが大詰めはどうか、亀治郎は技巧が前に出すぎないか、といった心配もしていたのだが、何のことはないしっかり泣かされてしまった。

勘太郎の茂兵衛は、やはり序幕第一場の純朴さが一番。第二場の利根の渡しでは、お蔦への想いにもう一つ溜めがあればなお良い。大詰第一場では、人違いをされて怒る凄みがなかなか。第二場は、まだ開幕2日目ということもあってか、お蔦とのやりとりや立ち回りに間のぎこちなさが見られるものの、幕切れの決めぜりふはきちんと胸に迫るものを感じさせてくれた。

亀治郎のお蔦は、やはり序幕第一場が上手い。芝居の巧さはあるが鼻につくほどではなく、特に越中小原節には泣かされた。他は、男女蔵の波一里儀十、亀鶴の堀下根吉、松也の辰三郎と、それぞれ持つ力どおり十分の出来。また、この芝居はさすがに若手花形だけでは数が足りないため、弥八の山左衛門、老船頭の由次郎、若船頭の宗之助、船大工の桂三などが脇を固め舞台を締めていた。



2.京鹿子娘道成寺 長唄囃子連中
昨年も亀治郎や三津五郎の挑戦が記憶に新しいが、今回は彼らのように「何を見せてくれるか」ということよりも初挑戦自体への期待感を持って幕開きを待った。

今回は道行はなく、所化のやり取りの後で紅白幕が左右に引かれると、舞台中央に金の烏帽子を戴いた花子が現れる。中啓を持つ手が震えているようにも見えて、こちらにも緊張感がひしひしと伝わってくるが、踊り進むに連れて徐々に落ち着いてくる。面長な顔つきからは父よりも母方譲りの印象を受けるが、成駒屋の叔父よりは品が良いかもしれない。決して器用な方ではないためか、長唄との間に微妙なところがあったり、身体も必ずしも柔らかくはないのだが、最後まで懸命に取り組んでいる様子にはとても好感が持てた。また、鈴太鼓から鐘入りに至るまで息の上がるようなところがなかったのは、多少とも短縮版かつ若いということを割り引いても立派なものだし、まずまずの奮闘振りと言って良いのではないかと思った。

なお、昨日の国立では2階席だったので無理だったが、今日は3列目だったこともあり所化の撒いた手拭いも無事確保。

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終演は18時40分と比較的早かったので浅草寺にお参り。凶が多いという評判のここのお神籤(実際2度ほど引いたことがある)も「吉」で、お礼の意味も兼ねて浅草神社にもお参りしてから帰宅。元旦に地元の八幡神社へ初詣した時のお神籤も「吉」だったし、昨日のサイン入り升、今日の手拭いと、何やら新年から縁起が良い感じ。世間の状況を考えると気の重い仕事始めも、何とかこの勢いで上手にスタートしたいものだと思った。
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初春歌舞伎公演(初日) [観劇(伝統芸能)]

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初春歌舞伎公演
国立劇場(大劇場) 2009年1月3日(土)11時30分開演 2階4列18番

今年は歌舞伎座さよなら公演の関係で2日に「古式顔寄せ式」が行われたため、どの劇場も3日からだが、国立劇場は例年通りでこの日が初日。

恒例の鏡開きをお目当てに開場時刻の10時を少し過ぎて到着したら、もう正面ロビーから南側売店まで列が伸びており、理事長や各役者のご挨拶は場内放送だけで聴くことに。でも、振る舞い酒を無事頂いて升を見てみると、何と團十郎丈のサイン入り!列の前の方だけでなく途中にいくつか含まれていたらしく「春から縁起が良い」思いをさせていただいた。また、初日ということもあってか、沢山の芝居見物仲間にもお目に掛かることができた。
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  石橋健一郎=補綴
1.歌舞伎十八番の内 象引 一幕
昭和57年の二代目松緑以来の上演となるもので、もちろん初見。浮世絵では幾つか残っているようだが、歴代團十郎でも二代目以降上演が途絶え「歌舞伎十八番」を選定した七代目も演じていない。今回も27年前が三幕物だったのを一幕にするなど、新たな「象引」と言えるものとのこと。
で、今回上演された芝居は荒っぽく言えば、悪役が公家の「暫」に象が出てくるようなもので、ユーモラスで他愛なく大らかな荒事らしさが感じられ、たっぷりと楽しめた。何よりも、昨年七月休演以来の舞台復帰を果たした團十郎が元気な姿を見せ、何より嬉しい限り。公家悪の三津五郎もきっちり。また、関東守護豊島家の跡継ぎ葵丸の巳之助が危なげなく勤め、成長を感じさせてくれた。



開演前と食事休憩には、こちらも恒例の太神楽曲芸協会による曲芸や獅子舞が披露されて、お正月らしい雰囲気。
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2.天皇陛下御即位二十年記念 十返りの松 箏曲連中 囃子連中
山田流の箏曲として昭和3年に発表されたもので、歌舞伎としては今回が初演とのこと。長寿を祝賀するという十返りの松を背景に上手側に箏曲、下手に囃子方が並び、福助が梅の精、橋之助が竹の精、また橋之助の息子3人が松の童として順次登場した後に芝翫が松の精として現れるという、成駒屋一門による舞台。穏やかな箏曲に乗って目出度く舞い収めるものだが、食事休憩後だったこともあり、30分弱の短い舞台ながら正直なところ結構眠気を誘われてしまった。



  四世鶴屋南北・三世瀬川如皐=作 古井戸秀夫=監修 国立劇場文芸課=補綴
3.誧競艶仲町 四幕六場
享和二年(1802)江戸中村座で初演以来の上演ということで、いかにも国立劇場の復活演目らしい取り組み。四世鶴屋南北による「双蝶々曲輪日記」の書き換え狂言で、京から江戸に舞台を移し、郷代官の南方与兵衛、遊女都、与兵衛女房お早といった登場人物で元の世界を持ち込みつつ、永代橋、深川、浅草駒形、下総八幡村、行徳といった地を巧みに織り込んだ作り。今回の監修・補綴の努力も大きいと思うが、途中休憩10分を挟んで2時間以上の舞台もすっきりとした仕上がりで、こちらも楽しめるものとなっていたように思う。
役者では「引窓」の与兵衛も経験している三津五郎が、やはり誠実な郷士という姿を手堅く見せて十分。都とお早二役の福助も、お早では田舎娘の純情さが少しくどい気はしたものの、概ね雰囲気は壊さず、出ずっぱりでまずまずの奮闘振り。橋之助の鳶頭与五郎は、もう少し気っ風の良さや勢いがあってもよいかとは思ったものの、違和感があるというほどでもなくそれなりの出来。三幕目の与兵衛町宅の場では、与兵衛妹お虎の芝のぶと中間才助の三津之助のやりとりなども面白かった。


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12月の観劇 [観劇(伝統芸能)]

国立劇場十二月歌舞伎公演
国立劇場(大劇場) 2008年12月6日(土)11時30分開演 1階9列42番
 竹柴其水 作 通し狂言 遠山桜天保日記 六幕九場

十二月文楽公演
国立劇場(小劇場) 2008年12月6日(土)17時開演 8列29番
 源平布引滝
  義賢館の段
  矢橋の段
  竹生島遊覧の段
  九郎助内の段

十二月文楽鑑賞教室
国立劇場(小劇場) 2008年12月7日(日)11時開演 12列35番
1.二人三番叟
2.解説 文楽の魅力
3.菅原伝授手習鑑
   寺入の段
   寺子屋の段

歌舞伎座百二十年 十二月大歌舞伎(夜の部)
歌舞伎座 2008年12月7日(日)16時30分開演 1階16列17番
1.名鷹誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場 一幕
2.久松一声 作 高坏 長唄囃子連中
3.三世河竹新七 作 籠釣瓶花街酔醒 四幕七場

歌舞伎座百二十年 十二月大歌舞伎(昼の部)
歌舞伎座 2008年12月14日(日)11時開演 1階16列12番
1.河竹黙阿弥 作  新歌舞伎十八番の内 高時 一幕
2.京鹿子娘道成寺 鐘供養の場 長唄囃子連中 常磐津連中
3.三世瀬川如皐 作 東山桜荘子 佐倉義民伝 二幕四場
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當る丑年 吉例顔見世興行 東西合同歌舞伎(夜の部)
京都四條・南座 2008年12月20日(土)16時15分開演 3階2列14番
1.近松門左衛門 作 傾城反魂香 土佐将監閑居の場 一幕
2.真山青果 作 真山美保 演出 元禄忠臣蔵 大石最後の一日 一幕
3.信濃路紅葉鬼揃 長唄囃子連中 竹本連中
4.源氏物語千年記念 源氏物語 夕顔 一幕

當る丑年 吉例顔見世興行 東西合同歌舞伎(昼の部)
京都四條・南座 2008年12月22日(月)10時30分開演 3階1列12番
1.正札附根元草摺 長唄囃子連中
2.八陣守護城 湖水御座船の場 一幕
3.藤娘 長唄囃子連中
4.梶原平三誉石切 鶴ヶ岡八幡社頭の場 一幕
5.森鴎外 原作 宇野信夫 作・演出 ぢいさんばあさん 三幕
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