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公事宿事件書留帳 十「釈迦の女」 [Books]

釈迦の女

釈迦の女

京都の公事宿(宿泊施設付弁護士事務所)を題材としたこのシリーズも文庫で十巻目。著者の澤田ふじ子は、愛知県生まれだが京都に長く暮らし、他にも「祇園社神灯事件簿」「禁裏御付武士事件簿」などのシリーズがあるようだ。(そちらはまだ読んだことがない)

市井ものの時代小説といえば江戸が舞台になることが多いので、少しでも京都に縁や想いを持つ者にとっては貴重な存在。宮部みゆきや北原亞以子のような文体と流れで引き込むタイプではなく、むしろ乾いていると言って良いほど淡々としているようだが、その中から弱い存在の登場人物への優しさが伝わってくるし、一編ごとの締め括り方も描ききらず余韻を残して終わるところが良い。エピソードに関わる歴史・文学・美術などの解説も程よく織り込まれているのが嬉しい。

NHKで「はんなり菊太郎」としてドラマ化されたとおり、主人公は公事宿の主(鯉屋源十郎)ではなく、田村菊太郎。奉行所同心の跡取りだったが、異母弟・銕蔵に家督を譲る想いから出奔し放浪の末に京都に戻り、鯉屋の居候を決め込んで、料亭の仲居で娘のいるお信とつかず離れずの付き合いをしている。源十郎や銕蔵の扱う事件の相談に乗り、首を突っ込み、時には町奉行や京都所司代からも頼りにされる。それでも宮仕えは断りながら飄々と暮らしており、情にもろいがいざとなれば剣も立つというような、オールマイティだが嫌みが無く愛すべきキャラクター。源十郎と菊太郎、また鯉屋の手代などととの京言葉による丁々発止のやりとりも、微笑ましく面白い。

これまでの中には、非道な悪人に菊太郎が怒りを顕わにするような事件もあるが、今回の表題作を始めとして、むしろ事件とまでは言えない運命の悪戯や貧しさに惑う人々の悩みなどが、心温まる形で解決するような話の方が多い。

こういう作家やシリーズに出会えるのは幸せなこと。次作の文庫化をまた楽しみに待ちたい。


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大川わたり [Books]

大川わたり

大川わたり


引き続きの山本一力で、処女長編。作者あとがきにあるとおり荒削りな面や、解説にあるようにやや展開の強引さも感じないわけではないが、だからこそ一気に読了させられたと言えるかも。他の著作同様に、しくじった挙げ句にやり直そうとする人間に対する厳しくも優しい目が印象的。善玉・悪玉ともに脇役もかなり活き活きしている。剣客・堀正之介がどこか秋山小兵衛を思い起こさせるのはご愛敬か。


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「中・高校生のための狂言入門」「蒼龍」 [Books]

中・高校生のための狂言入門

中・高校生のための狂言入門


今月は狂言を見に行く予定が控えている。まだまだ数えるほどしか見たことがなく、しかも今まで読んだ本ではがなかなか基本的な知識の部分が頭に入らなかった。しかしこの本は、近藤ようこの質問に山本東次郎が丁寧に答える対談形式で、必ずしも辞書的網羅的でないのに理解しやすかった。近藤ようこの挿絵もすっきり優しい雰囲気だし、写真も結構入っていて、タイトルから想像される「お子様向け」というイメージではなく、充実感がありお得な一冊。

蒼龍

蒼龍

  • 作者: 山本 一力
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: 単行本


リンクは単行本版だが、読んだのは文庫版。書評や後書きにあるとおり、著者の初期短編集で荒削りなところもあるが、どれも楽しく読めた。武士、商人、職人、いずれを描いていても、仕事、というか生業に賭ける人間の素晴らしさという点では共通しており、我が身を省みて「自分の仕事も気を引き締めて真剣に取り組まなければ」と痛感させられる。


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